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ストーカー

●登場人物

宏樹(♂)/男:陽子にしつこくつきまとうストーカー 陽子(♀):1年前に大きな事故にあった。雄貴という彼氏が居る 雄貴(♂):陽子の彼氏。金持ちで自信家

========== 【配役】 宏樹(♂)/男: 陽子(♀): 雄貴(♂): ==========

●注意事項

某巨大掲示板に【新ジャンル「ストーカー?」】という内容で投稿されたものを声劇用に改編したものです。

この台本に関しては性別転換等々、好きなようにお使いください。

役名Nのところはナレーションとして読んでください。

●本編

男「陽子!!!起きてくれよ、陽子!」

陽子「……」

雄貴N「呼びかけに応えることはなくストレッチャーで運ばれていく陽子」

雄貴N「それから一年が経ったある日」

宏樹「陽子!一緒に帰ろう」 陽子「…嫌……」 宏樹「またまた、そんなこといって~。帰る方向一緒なんだからいいでしょ?」 陽子「…やめて!……ホントに嫌!一緒になんか…帰りたくない…」 宏樹「いいじゃん、ほらいくよ!」

雄貴N「宏樹は陽子の手を強引に引っ張っていく」

陽子「……や…やめて…」 宏樹「いいからいいから」

宏樹「陽子は今、好きな人とかいるの?」 陽子「……いない…」 宏樹「そっかぁ…じゃあ好きなタイプは?」 陽子「…お金持ちで…頭がよくて…権力があって……自信家の人」 宏樹「ふーん…… じゃあ、嫌いなタイプは?」 陽子「あなた」 宏樹「……あははは!そっかそうだよね。    確かに僕はお金持ちでもないし、馬鹿だし、自信家でもないもんね!    あっ、そうだ!ねぇ、もうすぐ誕生日だよね?」 陽子「………全然違うよ……」 宏樹「陽子は何をプレゼントされたら嬉しい?」 陽子「………」 宏樹「いいからいいから!」 陽子「……ブランド物……」 宏樹「おおお!なんだか高そうだなぁ!    じゃあさ、何をプレゼントされたらいっちばん嫌?」 陽子「…花。花なんてすぐに枯れるし邪魔だし、あるだけでまったく役に立たないし…。    一番いらないもの…」 宏樹「そっか……。僕絶対、陽子にプレゼントあげるからね!」 陽子「っ!?」 宏樹「……どうしたの?」 陽子「………やめて…」 宏樹「え……?」 陽子「迷惑なの!……宏樹からもらうものなんてなにもいらない!!」 宏樹「………へへ………たのしみにしててね!絶対満足させるから!    それじゃ、また明日!」

陽子「……嫌い……なのに……」

宏樹「やっほー!陽子!」 陽子「………」 宏樹「元気ないなー!どうしたの?」 陽子「…あなたが来たから………」 宏樹「またまた照れちゃってー。ところで今日でしょ!誕生日」 陽子「……違う……」 宏樹「今日直接プレゼント渡しに陽子の家に行くね!」 陽子「…やめて!!……こないで!!」 宏樹「何時ごろがいいかな?…七時とか?」 陽子「………」 宏樹「わかった、それじゃもっと遅めに行くから!じゃあね、楽しみにしてるんだよ!」

雄貴「君はホントに笑顔がかわいいね」

宏樹N「その夜、陽子の家には彼氏である雄貴が来ていた。     陽子は満面の笑みで答える。」

陽子「ありがとう……。わたしがこんな表情を見せるのはあなただけよ……」 雄貴「陽子……愛してるよ…」 陽子「……わたしも……」

雄貴「そうだ、今日は陽子の誕生日だろう?    前々から欲しがってた新作のバッグだよ」 陽子「…うれしい!ホントにありがとう、前から欲しかったの」

宏樹N「陽子はより一層の笑みをうかべる」

雄貴「親父の友達が日本の直営店の店長なんだ。そんなの手に入れるなんて朝飯前だよ」 陽子「…わたしの欲しいものがわかるなんてすごいわね、ありがとう」 雄貴「陽子の考えてることならなんだってわかるさ……」

宏樹N「2人の空間をチャイムの音が遮る。陽子の表情が一気に曇る」

雄貴「こんな時間に誰かな?」 陽子「……わたしが今、一番会いたくない人…」

宏樹「こんばんはー!陽子!ちゃんときたよー。それと雄貴君こんばんは!」 雄貴「…またおまえか…」 宏樹「陽子、誕生日おめでとう!!    これは僕からのプレゼント、向日葵の花束だよ!向日葵の花言葉は――――ー」 陽子「なんで………なんでこんなことするのよ!!来るなっていったのに…。    こんな…き…汚い……花なんてもらったってちっとも嬉しくない!!    あなたのせいで人生で一番最悪な誕生日になったわ!!」 雄貴「おまえ、よくも陽子を泣かしたな…。ぶっ飛ばしてやるよ」

宏樹N「殴りかかる雄貴。    ぼろぼろにやられる宏樹。    それを見ようともせず背を向けている陽子」

陽子「……いい?あんた、明日絶対にあたしに話しかけてこないでよね!!    大嫌いなんだから!」 雄貴「きもちわるいんだよ!さっさと消えろよ、このストーカー野郎!    今度、陽子に近づいたらぶっ殺してやるからな!」

宏樹N「玄関先でうずくまる宏樹をよそに二人は部屋へと戻っていく」

雄貴N「次の日、満面の笑みを浮かべる陽子。    しかし、その目はなぜか曇っているようにもみえる」

陽子「………」

宏樹「陽子!おはよう!今日もいい天気だねっ!」

陽子「ひろき………ずっとそばにいてね」

宏樹「……え?」 陽子「あなた、わたしといっしょにいるとすっごいしあわせでしょ。    だからずっとそばにいてよ」 宏樹「……なんで……そんなこというの?……ねぇ…どうして―――」 陽子「『あなたわたしのことすきになったでしょ?』」 宏樹「……そんな……そんな悲しいこと言わないでくれよ!!!!」 陽子「……」

宏樹「…ちょうど君が事故に遭って一年が経つね…。    君は僕の家へ向かう途中、居眠り運転をしていたトラックに巻き込まれた…。    救急車で近くの病院に運ばれてすぐに手術をしたんだ」 陽子「……」 宏樹「知らせを聞いてすぐに病院に駆けつけたよ。    僕が病院に着いたとき、君はまだ手術中で、6時間以上に及ぶ大手術だった」

宏樹「手術はなんとか成功したけど、君は意識を失ったままだった。    それでも、僕は来る日も来る日も君の病室に行って話しかけたんだ。    学校で失敗したこととか、飼っている猫の話とか…。    君は覚えていないかもしれないけど…」 陽子「………」 宏樹「それから三ヶ月たったある日、君の意識が戻った。    僕は喜んだよ。これでまた一緒に生きていくことができる、君を幸せにすることができるって。    でも……君が目を覚まして最初に僕を見た時発した言葉は期待を裏切るものだった…」

陽子「……ひろ…き……ひろきなんて嫌い…大嫌い!!…近寄らないで!!…何処かへ行ってよ!!」

宏樹「僕は驚いたよ…今まで四年間付き合ってきて一度も言われたことのない言葉だったから……。    怒りなんてものはなかった……ただ、悲しみだけが僕の胸に押し寄せてきた。    それからも毎日僕は君の所へ通い続けた。けれど、言われることは何時もいっしょだった…。    何がどうなってるかわからなくて…。    君はあの時死んで、違う人間が君の体を乗っ取っているんじゃないかとも思ったよ。    君はいつも泣きながら―――」

陽子「あたしのそばにこないで!あんたの顔なんてもう見たくない!」

宏樹「僕は君から毎日のように浴びせられる暴言に耐えかねてついに病室に顔を出さなくなった……」

宏樹「半年後、君が無事に退院したことを聞いた…。どうしても気になって君の家に行ったんだ。    顔を合わせなくていい…ただ…君が……。君の姿をみることができたらそれでよかった」

宏樹「君は男の人と仲良く手ををつないで歩いていた。    そこには昔、僕に向けてくれた笑顔があった。」

宏樹「君がとても幸せそうで安心したよ。    僕以外の人とでもあんなに素敵に笑えるなら、きっと大丈夫なんだって、そう思い込んだ。    ……でも、少しだけその笑顔に僕は違和感を覚えた。    見慣れているはずの笑顔なのに、何かが違う…。    何処か大切なものが欠けているような、そんな感じがしたんだ」

宏樹「それからしばらくしたある日、僕たちは街中で偶然出会ったね。    そのときも君は入院していたときと同じだった。    でも…気づいたんだ……僕に罵声を浴びせる君の瞳の中に、    以前見た笑顔に欠けていたものがあるってことを……」

陽子「なんであんたがここにいるのよ… 目の前から消えうせてよ!」

宏樹「言葉ではそういっているけれど、瞳の中は悲しみに溢れていた」 陽子「……そんなこと―――」 宏樹「僕はやっと気付いたんだ…。    君はどうやっても自分の本当の気持ちを口に出せず、    その代わり、口を突いて出てくるのは真逆の言葉ばかり。    伝えたい気持ちを伝えることのできない苦しみ…。    本当に側にいて欲しい人が離れていく悲しみ…。    僕は君の側にいたのに…。誰よりも君の事を知っていたはずなのに…。    それに気付くことができなかった」 陽子「…ひろき……わた…し…」 宏樹「そのとき僕は心に決めたんだ。これから先、何があっても君の事を愛し続けるって。    どれだけ君に罵声を浴びせられてもいい……。    周りから変人扱いされたっていい……。    昨日みたいにボコボコにされたっていい……。    君が雄貴君と結婚してしまってもいい……。    …それが、君を一人ぼっちにさせてしまったことへの償いになるのなら…」

陽子「………わたし!」

雄貴N「満面の笑みを浮かべる陽子    本当の…一片の曇りもない本当の…笑顔を」

陽子「わたし、今の自分が大好き…。    思ってることもはっきりいえるし……。    楽しいときには大きな声で笑って、悲しいときは涙を流すこともできる。    事故がわたしをこんなにも素晴らしく変えてくれた。    わたし感謝してるんだよ?    事故があって……あなたと別れることができて……雄貴君と付き合うことができて…。    あなたと会うたびに、ああ、事故にあってよかった、    離れることができてよかったって心から…思ってるの…」

雄貴N「陽子の頬に一筋の雫が伝う    その雫はあとからあとから、とめどなく溢れ出して陽子の頬に涙の川を作る。    それでも陽子は笑顔を崩さなかった」

宏樹「気付いてあげることができなくてごめんね…。    寂しい思いをさせてごめんね…。    ……僕は本気だよ。これから一生を君のために過ごすよ……。    だから昨日みたいな事があったって君への気持ちは変わらないよ…。    だから………さっきみたいなことは言わないでよ……」

雄貴N「宏樹は瞳の端に涙を貯めながら陽子を見つめる」

陽子「……わたし……世界で一番……不幸なんじゃ…ないか……なぁ…    あなたみたいな人がずっと付きまとって来て…    ひどいこといっても…ずっと……    事故のおかげでこんな風になることができたわたしを……」

宏樹「事故の前でも後でも、君は君だよ。    少しだけ性格が『ひねくれて』しまったかもしれないけれど…」

雄貴N「そう言って笑顔を作った瞬間、宏樹の頬から涙が溢れ出す。」

陽子「……わたしは……宏樹を……誰よりも………っ……」 宏樹「……わかってるよ。    言葉なんかで伝えなくたって、陽子の本当の気持ちはしっかり僕に届いてるから…」

雄貴N「宏樹は言葉を止めるように陽子を抱きしめる。」

陽子「……あ…あ……    わ………た…し……ひろき……が……」

雄貴N「宏樹に抱かれながらも泣きじゃくり必死で抵抗する陽子」

陽子「……ずっと……そばに……………    わたし……ひろきのこと……す…………き…らい……。    ……ずっと…いっしょに……いた……く……ない……」

宏樹「……もういい……もういいんだよ……何も言わなくていいから……。    ……ありがとう………」

雄貴N「陽子をより一層強く抱きしめる宏樹」

陽子「……わたしは…世界で………いちばん………ふ…………しあわせ………」

雄貴N「陽子はもう一度笑顔を見せた。    一片の曇りもない透き通った最高の笑顔を……」

雄貴N「陽子の部屋の窓で向日葵の花が揺れている。    向日葵の花言葉は、『私はあなただけを見つめる』」

<了>

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