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男女の気持ち(ラーメンズ台本)

●登場人物 片桐♂:小林の友人 小林♂:女にふられてやけになっているらしい

●注意事項

「ラーメンズ」の同名のコントを書き起こし、声劇用に多少の改変を加えたモノです。

この台本に関しては性別転換等々、好きなようにお使いください。

だいたい上映時間は10分前後になると思われます

EndFragment

●本編

片桐「おい!」 小林「!」 片桐「お前は間違っている!」 小林「間違ってない!」 片桐「間違ってる!」 小林「間違ってない!」 片桐「間違ってる!」 小林「間違ってる」 片桐「間違ってる」 小林「間違ってるんだよなあ」 片桐「間違ってるんだよ」 小林「分かってるけど……行く!」 片桐「分かってるなら行くな!」 小林「俺を分かってくれ!」 片桐「お前は分かってない!」 小林「分かってる!」 片桐「分かってない!」 小林「分かってる!」 片桐「分かってない!」 小林「分かってない」 片桐「分かってない」 小林「分かってないんだよなあ」 片桐「分かってないんだよ。みんな、自分のことが一番わからないんだ。    だから、俺はお前に言う!行くな!」 小林「行く!」 片桐「行くな!」 小林「行く!」 片桐「行くな!」 小林「だって!……だって、もうこうするしかないんだ。    アイドルになって彼女を見返すんだ!」 片桐「……無理があることに薄々気付いているだろ」 小林「大丈夫だよ!俺、まあまあかっこいいから大丈夫だよ!」 片桐「確かにお前はまあまあかっこいい。だかな、十年遅い!」 小林「遅くない!」 片桐「遅い!」 小林「遅くない!」 片桐「遅い!」 小林「早いくらいだよ」 片桐「遅すぎる!」 小林「ニットブックを出すんだ」 片桐「(平手打ち)」 小林「顔はやめてよ!アイドルやで!」 片桐「……一人の女を見返すために、千人の女にモテたいって気持ちは分かる。    だがな、お前は今、自分を見失っているんだ」 小林「俺、まあまあかっこいいのに?」 片桐「お前、まあまあかっこいいのに」 小林「俺、まあまあかっこいいのにか」 片桐「お前、まあまあかっこいいのにだ。    まず冷静になれ。それまで、俺たちが励ましてやるから」 小林「俺達って?」 片桐「“小林を励ます会”」 小林「……やめてくれよ!女に振られたくらいで」 片桐「もうみんな集まっちゃったよ」 小林「みんなって?」 片桐「お前の親戚とか」 小林「ええええ!?最悪だよ!へこむわー……」 片桐「励ます会が励ましてやるって」 小林「そういうことじゃないよ。お前の作ったこの状況が最悪なんだよ」 片桐「じゃあどうするんだよ!会場とかケータリングとかマイクロバスとか!」 小林「規模がでかいよ!」 片桐「でかくない!」 小林「でかい!」 片桐「でかくない!」 小林「でかい!」 片桐「でかいかなあ」 小林「でかいよ!マイクロバスって……」 片桐「ならどれくらいが適当なんだよ」 小林「MAXでハイエース」 片桐「七人?少ねーよ。あの神輿。二百キロあるんだよ」 小林「そんなものまで用意してたのかよ!?」 片桐「らっせーら!らっせーら!神輿で気持ちを晴らっせーら!」 小林「……晴れないよ。俺の心の曇天模様は、永遠(とわ)に晴れることはないのさ」 片桐「……お前なあ、この世にふられた奴なんて何億人いると思ってるんだよ。    それになあ、ふられるのもつらいけど、ふるのってもっとつらいんだぜ」 小林「ありえないよ。ふられた方がよっぽどつらい」 片桐「お前、女ふったことあんのかよ」 小林「ないよ。ないけど多分そうだろ」 片桐「っかー、お前はまあまあかっこいいだけで本当にわかってないな。    じゃあ、やるか」 小林「…何を」 片桐「俺が女やるから、ちょっとふってみろ」 小林「そんなコントみたいなことできるかよ」 片桐「いいから。俺、女な。お前、男」 小林「よーし、あっさりふってやる」

片桐「(女キャラで)…好き!」 小林「(かっこつけて)…マジで?…お前さあ、キリン知ってる?」 片桐「え?」 小林「キリン」 片桐「キリンって動物の?」 小林「そうそう。あれな、もともと首が短かったんだぜ」 片桐「そうなんだ」 小林「そんで、目の高さの葉っぱを食べ尽くしちゃって、    高いところの葉っぱを食べるために、首が長いやつが生き残ったってわけ」 片桐「そうなんだ」 小林「つまり、それぞれにはそれぞれに相応しい生き場所と死に場所があるってこと。    お前の居場所、ってさ、俺んとこじゃねえんじゃねえ?」 片桐「……」 小林「…ごめん、言いすぎた。    (元に戻って)本当だ、ちょっと傷つく!」 片桐「だろ?まあ、決して典型的なパターンではなかったけども」 小林「どういうこと?」 片桐「何ていうかさ…そういうことじゃないんだよな」 小林「ならお前できんのかよ」 片桐「よーし。“ザ・女のふり方”ってやつを教えてやる」

小林「(女キャラで)好き!」 片桐「(老人で)そもそも…なぜワシなんかを好きになったんじゃ」 小林「(戻って)なんねーよ」 片桐「ここは来いよ」 小林「行けねえよ。SFだもの。それにやっぱり、今、ふられてみじめな男の当事者だから、    それ以外の気持ちなんて、理解する余裕ないんだ」 片桐「……お前なあ、この世にふられた奴なんて何億人いると思ってるんだよ。    それになあ、男より女の方がふられるってつらいんだぜ」 小林「ありえないね。女なんてすぐにケロッとしてるんだ」 片桐「ふられた女の気持ちなんてわかんないだろ」 小林「だったらお前の理論だって分かんないじゃねえかよ」 片桐「ならやるか」 小林「何を?」 片桐「俺が男やるから、お前、女」 小林「そんなコントみたいなことできるかよ!」 片桐「今さら何言ってんだよ!お前女な。俺ふるから」 小林「よーし、絶対傷つかないでふられてやる」

小林「(女キャラで)そうなんだ……彼女、いるんだ……」 片桐「ごめん」 小林「なんで?謝んないでよ」 片桐「でも、俺、お前のこと―――」 小林「そっから先は……ね。あたし、ここで泣きたくないから」 片桐「…ごめん」 小林「ほらまた。謝っちゃダメだよ」 片桐「…あ…そっか」 小林「はい!もう、この話はおしまい!忘れて、五十嵐は、なーんにも聞いてない」 片桐「……うん」 小林「ねえ、この間のCD、どうだった?」 片桐「ああ、それも、返そうと思って持ってきたんだ」 小林「そうなんだ……いいよ、それ、五十嵐にあげる」 片桐「でも」 小林「いいんだ。あたし、もう覚えちゃったから。いいよねー。『ハインリッヒーズ』って    (涙をこらえて)……あれ、ヤダ、もう……なんだ、あんがいあたしって、もろいんでやんの」 片桐「ヨリ子、俺―――」 小林「もう行かなきゃ!……じゃあね、あたしの素敵な思い出」   <駆け出してその場から離れ、家の洗面台の鏡に向かって> 小林「ふー……ひどい顔……絶対きれいになってやる!    (元に戻って)ほら、前向きじゃん」 片桐「そんなもんお前のさじ加減だろ!」 小林「なんだよ!じゃあお前できんのかよ」 片桐「よーし、めちゃくちゃ傷ついてやる」

片桐「(女のキャラで)そうなんだ……彼女……いるんだ」 小林「ごめん」 片桐「もー最悪だわよ!大っ嫌い!うわああああああん    (走り出す)たったったったった、ガラガラ、ピシャ!    すいません!内臓を買ってください!」 小林「おい!ありえねえよ!」 片桐「(元に戻って)ほら。ズタボロだよ。もうボロ雑巾だよ」 小林「それこそお前のさじ加減じゃねーか」 片桐「これくらい女もつらいんだよ」 小林「どうかなあ」 片桐「とにかく、男も女もふられてつらいのは当然なんだよ。そうクヨクヨすんな」 小林「うん、そうだね。お前と話してたら、ちょっと楽になってきたよ。……あのさあ」 片桐「ん?」 小林「もう一回やらしてくんねえ?」 片桐「何を?」 小林「その…小芝居というか…」 片桐「あーあー、何?気に入った?」 小林「むちゃくちゃ気持ちよかった」 片桐「ふる方?ふられる方?」 小林「ふる方っしょー」

片桐「(老人で)そうですか。彼女、おられるんですな」 小林「そいつに用はねえよ」 片桐「(戻って)来いって。俺はこれがやりたいんだよ」 小林「俺はそいつとやりたくねえんだよ」 片桐「(老人で)ワシの、どこがお気に召さないんじゃ」 小林「足腰だよ」 片桐「ふっふっふ。若きジェダイの騎士よ……」 小林「やっぱりSFじゃないか」 片桐「好きじゃ」 小林「(蹴る)」 片桐「いったー……(老人で)フォースを使え」 小林「もう何が何だか」 片桐「さあ、皆の衆!宴の準備じゃ!」 小林「何の」 片桐「小林を励ます会」 小林「だからそういうことは……って親戚のみんな!」 片桐「わーっしょい!わーっしょい!」 小林「あはははは、あはははは」

小林「よしっ」 片桐「よしっ」

小林「確認な。俺が告白してふられたら、まず、アイドルになりがたる。」 片桐「止める」 小林「ふられた時の男女の違いをシミュレーションする」

片桐「俺がピントのずれたアドバイスする」 小林「最後は親戚まで呼んじゃって、俺大爆笑」 片桐「完璧」

小林「よーし!こんだけ保険かけとけば大丈夫だろー。行ってくる!」

片桐「頑張れよ」

小林「おう」

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