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エアメールの嘘(ラーメンズ台本)

●登場人物 片桐♂:卒業旅行でアラスカに行ってきたらしい 小林♂:卒業旅行で江の島に行ってきたらしい

●注意事項

「ラーメンズ」の同名のコントを書き起こし、声劇用に多少の改変を加えたモノです。

この台本に関しては性別転換等々、好きなようにお使いください。

だいたい上映時間は15分前後になると思われます

EndFragment

●本編

  <片桐、写真の束を見せながら> 片桐「これ、この前の旅行の写真な。スゲエだろ」 小林「(棒読みで)……スゲエスゲエ。こんな本格的な山脈なんて、俺見たことねえや」 片桐「うん、そうなんだよー。感動的だぞー。    このモノにあふれた手狭な日本を離れて、スケールのでっかい世界を見ちゃうとさ、    『はああ、俺は何を狭いところでゴニョゴニョやってんだ』ってな、思っちゃったりするわけよ」 小林「なるほどねー。確かに、狭いよりは、広い方が、いいもんねー」 片桐「……分かってないだろ」 小林「ん?」 片桐「いいか?広いんじゃないの。ひっろおおおおおおおおいの!」 小林「……へえ」 片桐「何、お前、感動とかしねえの?」 小林「だって、分かんねえよ、俺は見てないわけだし、写真だって、こんなサイズじゃピンとこねえよ」 片桐「しょうがないだろうが、そればっかりはよ。    想像しろよ。このほら、一個ボンッと岩があるだろ、これがだいたい十メートルくらい」 小林「……十、おおー」 片桐「だーかーらーよー。きょうめよ!興味を持てよ!」 小林「分かったよ。十メートルなんだろ?その石が」 片桐「石じゃない、岩」 小林「ああ、岩が」 片桐「岩じゃない。いっわああああ!」 小林「んー、無理だよー、そんなふうに言われてもー。    じゃあ、その写真十メートルに引き伸ばしてくれよ」 片桐「無茶言うなよ」 小林「無茶言ってるのお前だろ?    いいじゃん。行って、見た人が感動してさ。    俺は、その風景の感動より、いい経験してきたお前を見て、いい刺激をもらってるよ」 片桐「……何、なんか最終的にはお前のほうがかっこいいみたいな感じなってない?」 小林「大丈夫だよ、なってないよ。世界を見てきたお前の方がちゃんとかっこいいって」 片桐「まあ世界っていっても?卒業旅行で一度行ってきたってだけだけどな。    あれ?お前はどこ行ったんだっけ」 小林「(自信たっぷりに)江の島」 片桐「…なんで?」 小林「だめか?」 片桐「いや、だめじゃねえけど何か……え?江の島?」 小林「それは何?自分が海外で、俺が国内だからたいしたことねえみたいに言いたいわけ?」 片桐「そういうんじゃないけど」 小林「いいぞー、江の島。不良がいっぱいいてさ、朝とか超さみーの。    土産屋に乾燥ヒトデが売ってたんだけどさ、生乾きなの」 片桐「いいか?」 小林「…良くない。もー!いいなー!海外!あ……お土産」 片桐「え?」 小林「おーみーやーげー!」 片桐「いや、ないよ」 小林「こいつ最悪だ。自分にだけブランド物とか買ってきたんだろ」 片桐「買ってないよ」 小林「アシックスか?プーマか?」 片桐「そういうブランドかよ。いずれにせよ買ってないよ。    貧乏旅行だったんだよ。ホント、リュックひとつだけの」 小林「っはー、かっこいいでございますわね」 片桐「ところがねー、俺なんかよりよっぽどかっこいい

   “世界のまたにかけ方”してる奴がいるんだなー」 小林「……ふーん」 片桐「……きょうめよ!」 小林「分かった分かった。きょうむよ」 片桐「こいつだよ。ほら、この写真に一緒に写ってる」 小林「ああ、お前の友達だろ?え?    またそいつはそいつでどっか行ってるの?」 片桐「違うんだよ。一緒に行って、まだ向こうに残ってんだよ」 小林「え?だってもう三か月は経つだろ?」 片桐「うん。こいつな、無理やり就労ビザとって、向こうで働き始めちゃったんだ」 小林「何でまた」 片桐「生き甲斐見つけちゃったんだって。かっこいいよなー」 小林「へー」 片桐「詳細はこうだ。    『その後の日本はどうだ。俺がいなくても平和か?』。何言ってんだよなあ」 小林「いやあ、俺知り合いじゃないから全然ピンとこないや」 片桐「『久しぶり。俺は元気だ。アラスカの大地は、俺によく似合う厳しい世界だ。     化石の発掘はかなりきつい。しかし、何物にも替えがたいロマンがある。     この間はティラノサウルスのアゴを見つけて、ちょっとした有名人になったんだぜ。     他にもトリケラトプスの背びれ、プテラノドンの角、けっこう出てくるもんだ。     同じ地球で歴史を刻んだ友達に、十億年ぶりに再会してる気分さ。     お前も早く、人生の目標を見つけて、ガムシャラに生きてみな。     そんとき見える何かが、お前の星なんだぜ、六月、満天の星空の下より”     かーっこいいー!」 小林「うん……いや、待て待て」 片桐「ん?」 小林「ちょっとその手紙見して」 片桐「何よ」 小林「……んー?いや、でも……あれ?」 片桐「何だよ」 小林「こいつ……今どこにいるんだよ」 片桐「だから、書いてあるだろ、アラスカだよ。    木とか山とかよお、びびーっととんがっててさあ―――」 小林「これ、おかしいよ」 片桐「何が」 小林「だって、星空って」 片桐「は?夜晴れてりゃ星くらい見えるだろ」 小林「いや、夜は来ないから。だって、アラスカだろ?    五月くらいからもう太陽沈まないんじゃないの?」 片桐「そうなの?」 小林「お前行ってんだろ?」 片桐「でも三ヵ月前だから」 小林「それとな、トリケラトプスに背びれないよね」 片桐「ん?だって、背中にこういう……」 小林「それステゴサウルス。あと、角があるのはプテラノドンじゃなくテラノドンだよね。    ……こいつ……本当に恐竜の化石の発掘してるのか?    ……それ以前に、アラスカにいないんじゃないのかなあ」 片桐「…何言ってるんだよ、いるよ!やってるよ!    だって!ロマンだぞ!ロマン!十億年だぞ?    二十何年しか生きてないお前とはレベルが違うんだぞ!」 小林「そこもなんだよ。恐竜はだいたい二億年前とかの生き物だろ。    十億年前っていうと、まだ生き物は生き物のカタチしてないんじゃないかなあ」 片桐「あ…え…わああああああああ」 小林「デカイ声出してもごまかされないからな。間違いない。この手紙、全部嘘だ」 片桐「だめだよ!そんなのだめだからね!お前アラスカ行ったこともないクセに!    なに言ってんだよ!お前生きた恐竜見たことあんのかよ!」 小林「こいつだってねえだろ」 片桐「分かんないだろ!見ちゃったけど政府に口止めされてるかもしれないだろー!?    恐竜復活計画だよ!こっそり技術開発してんだよ!アメリカに先を越されないように」 小林「アラスカってアメリカだよ」 片桐「情報操作だよ!」 小林「事実だよ」 片桐「Xファイルだよ!Xファイル!あいつ大丈夫かなあ。脳とか改造されてないかなあ」 小林「心配なら電話してみりゃいいじゃん」 片桐「だめだよお!外部との連絡は禁止されているんだ」 小林「手紙きてんじゃん」 片桐「それはな、地元の何とか族の子供がな、

   恐竜の骨欲しさにこっそりポストマンに渡してくれたんだ」 小林「これ、消印大阪だぜ」 片桐「いやああああああああああ」 小林「……きっと、お前にタンカ切って残った手前、向こうで頑張ってるってことにしたかったんだろ」 片桐「(静かに泣きだす)」 小林「ごめん。お前の憧れだったんだもんな、そいつ。あーあ、言わなきゃよかった」 片桐「……いいんだ。知ってたんだ」 小林「え?」 片桐「だって、アラスカから、ハガキが五十円で届くわけねえだろ」 小林「あ」 片桐「……」 小林「返事書こうか」 片桐「え?」 小林「当然だろ。手紙読んで、こっちも言いたいことがあるんだ。だったら手紙返そう」 片桐「やめろよ」 小林「俺が書いてやるよ」 片桐「いいよ」 小林「『お元気ですか。スゲェな!ティラノサウルスの骨を見つけたのか!     やっぱりお前には、そのスケールの大きな仕事が似合ってるぜ』……どうだ?」 片桐「お前…」 小林「いいじゃん、わざわざ見抜いたこと報告しなくっても。騙されよう。    かっこいいじゃないか。アラスカで化石の発掘なんて」 片桐「『(書きながら)お元気ですか。スゲェな!ティラノサウルスの骨、見つけたのか!     俺は相変わらずバイト生活だ。     やっぱりお前には、そのスケールの大きな仕事が似合ってるぜ。     いつか科学雑誌で、お前と恐竜のツーショットが見られるのを楽しみにしてるからな!」 小林「『がんばれよ!』」 片桐「『負けるなよ!』」 小林「『この大嘘つきめ』」 片桐「だめだめだめだめ」 小林「うわー、すげえ余計なこと書きてえ」 片桐「何だよー。お前が騙されようって言ってくれたんじゃないかー」 小林「そうだな、悪い悪い」 片桐「『いつか俺が旅行に行けたら、久しぶりに酒でも飲もうな』」 小林「『アメリカ……村でな!』」 片桐「だめだってば!」 小林「『大阪にいてんねやろ』」 片桐「おい!」 小林「『なぁ、自分』」 片桐「なんでお前が入ってくるんだよー。俺に来た手紙なんだから、お前関係ないだろ」 小林「そうだな、まったくその通りだ……うまく書けよ」 片桐「ありがとう」 小林「なあ『インドより』だけ書かしてくんねーかな」 片桐「ダメ」 小林「だよな……『ロシアより愛をこめて』」 片桐「ダメ」 小林「かっこよくね?」 片桐「かっこよくねえよ」 小林「……『怒りのアフガン』」 片桐「ダメ。」 小林「『シベリア超特急』」 片桐「ダーメ。お前目的変わってきてない?」 小林「変わってきてる。    いいなー海外、なんか俺も行きたくなってきちゃった。…なあ、何でアラスカにしたの?」 片桐「ずーっと夢だったんだけどさ、生で鯨が見たかったんだよねー」 小林「へー。見れるんだ」 片桐「見れなかった」 小林「え?」 片桐「全然いねえの。雨とか降ってきちゃうし」 小林「うわ、最悪だ。テンション下がるなー」 片桐「で、次の標的を“白頭ワシ”にしたんだ」 小林「ああ、あのデカイバイクとかによく描いてあるやつ?」 片桐「そうそう、あのかっこいいやつ」 小林「かっこよかった?」 片桐「見れなかった」 小林「全然じゃん」 片桐「そう。全然。でもね、日本に帰ってきて思ったんだ。    その辺にいるスズメ見てるだけでもさ、    実は野生動物ウォッチングできてるんじゃないかなって、感動できるんじゃないかなって。    鯨見るのと、同じことなんじゃないかなって」 小林「うん………違うだろ」 片桐「違うな」 小林「全然違うよ」 片桐「なー、本物の鯨見たらスゲエんだろうなー」 小林「だから江の島なんだよ」 片桐「え?いないだろ?鯨」 小林「鯨みたいなおばさんはいたよ」 片桐「“みたいな”じゃ意味ないんだよ」 小林「ありゃ多分、野生だぜ」 片桐「ありえねえよ」 小林「何だよー、おのおばさん養殖だってのかよ」 片桐「どっちでもねえよ。人だよ!人!」 小林「あれ人かなあ……」 片桐「人だよ」 小林「だって色黒の人だったよ」 片桐「人じゃん」 小林「あ、人だ。あ、でも白頭ワシみたいな鳩いたよ」 片桐「鳩じゃん」 小林「あ、鳩だ。あ、分かった!江の島つまんねえ」 片桐「お前さあ、アラスカの嘘あんだけ見破ったくせに、    もっと江の島を演出することができないの?」 小林「……江の島はいいぞー。詳細はこうだ。    えー…ちょっとその手紙かして。    『その後の日本はどうだ』」 片桐「国内じゃん」 小林「『江の島の大地は、俺によく似合う厳しい世界だ』」 片桐「そうかな」 小林「『不良のファッションは、かなりきつい。しかも、何物にも替えがたい怖さがある』」 片桐「お前、カッコ悪いなー」 小林「『この間は、砂浜から犬の骨が出てきて、ちょっとした大騒ぎになったんだぜ』」 片桐「うわー」 小林「『他にもボラの背びれ、小銭、K-SHOCK、なんかの鍵。結構出てくるもんだ』」 片桐「スケールちっせー」 小林「『小さい頃のいやな思い出に、数年ぶりに再会してる気分さ』」 片桐「独特の切なさだな」 小林「『お前も早く、海の家とかで、ガムシャラにバイトしてみな。     そん時に出会った理不尽な客とかに、殴られるんだぜ』」 片桐「最悪だ」 小林「『そして出る、星なんだぜ』」 片桐「上手くねえよ……」 小林「『9月』」 片桐「『クラゲしかいない濁った海より』」 二人「はっはっはっはっは」 小林「ヒトデいる?」 片桐「いらない」

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