top of page

study(ラーメンズ台本)

●登場人物

小林(不問):振り回す人。

片桐(不問):振り回される人。本当は坂東さん。

●注意事項

「ラーメンズ」の同名のコントを書き起こし、声劇用に多少の改変を加えたモノです。

この台本に関しては性別転換等々、好きなようにお使いください。

上映時間は大体15分前後になると思われます。

●本編

片桐「(溜息)……鉛筆も、ノートも、使い切ったことがないまま、大人になってしまいました。    中学高校と、六年間も学んできた英語が、喋れません。    読めるけど、書けない漢字が、たくさんあります。    知ってるはずなのに、どっちが右で、どっちが左かを、時々考えてしまうことがあります。    全部……あなたの言うとおりだ」 小林「……」 片桐「いつかは克服できるだろうと思っていることは、克服できないままに……    私は、消えてなくなっていくのだろうか……」 小林「私の国に、こんな言葉があります。    『“学習”とは“愚かなギャンブラー”だ。どちらも最後はすべてを失う』」 片桐「でもやっぱり、人生を豊かにするために、学習することは―――」 小林「身の程をわきまえてください。    この世界にある長い長い時間の中で、今までいなかったあなたという存在が現れて、    今いて、そしてまた、いなくなっていく。    なにもなかったかのように、完全に消えてるんです。    私を含め、人間の存在とは、ただ、それだけのことです」 片桐「だったら―――」 小林「(遮るように)“悔いのないように生きる”ですか?    消えてなくなれば、その“悔い”を感じる、あなた自身が存在しなくなるんですよ。    この広い広い宇宙の中で、あなたの存在など、もはや“ない”んです」 片桐「……理解するのが、怖いです」 小林「申し訳ないが、そこまで感情を察してあげるほどの価値はあなたにはない。    怖いでしょうが、ご理解ください」 片桐「……しました」 小林「本当ですか?」 片桐「本当です」 小林「本当ですね?」 片桐「本当です」 小林「ならば、改めて聞きます。……私の万引きを許しますね?」 片桐「……うーん」 小林「どうして、分かって頂けないんですか?」 片桐「すいません。どうしても」 小林「いいですか。この世界に、あなたという存在があって、そして、消えてなくなっていく。    家電売り場に、MDウォークマンという存在があって、そして、消えてなくなっていく。    ただ、それだけのこと」 片桐「そこなんですけどね、ウォークマンは、消えてなくなってないんですよね。    ここにあるんですよね」 小林「どうしてあなたは物事を物質的にしか考えられないんですか。……“ない”んです」 片桐「いや、でも見えてるから」

小林「“ない”んです」 片桐「はあ……」 小林「私の国に、こんな言葉があります。    『“物質”とは“遠い景色”だ。どちらも、何もないからこそ目に見える』」 片桐「いや、あなたの言ってることの、ひとつひとつは何となくわかるんです。    私自身、人生なんて、考えたこともありませんでしたから。    でも、それとこれとは違う話なんじゃないかなって」 小林「違いません。何ひとつ、違いません。    人間は何も克服できないままに消えていきます。    だから私も、この手癖を克服できないままに消えていきます。    ただ、それだけのことです。それだけのことに対して、なぜ店長を呼びますか?」 片桐「でもバイトの私の一存でこういうことは」 小林「肩書という浅はかな価値観で、人間を縛るのはおやめなさい。    私の国にこんな言葉があります。    『“肩書”とは“部分的なピノキオ”だ。どちらも“カタガキ”“肩が木”』    ……権力なんて、つまらないエゴイズムなんです。    ……お分かり頂けましたか?」 片桐「……はい」 小林「店長は呼びませんね?」 片桐「……はい」 小林「素晴らしい。ならば改めて聞きます。    ……私の万引きを、許しますね?」 片桐「……うーん」 小林「どうして分かって頂けないんですか?」 片桐「すいません。すいません。…あれえ?」 小林「一歳の赤ん坊と、二歳の赤ん坊とは、倍違います。    がしかし、七十九万一歳と七十九万二歳の赤ん坊とでは、見分けが、つかないのですよ」 片桐「はぁ?」 小林「この広い広い宇宙の中で、私の自宅と、この警備室との距離なんて、もはや“ない”んです。    だから、もう私は帰っていいんです」 片桐「……」 小林「今、心の中で“ヘリクツ”と思いましたね?」 片桐「思ってないです」 小林「……(じい」 片桐「…思いました」 小林「違いますね?」 片桐「はい」 小林「ヘリクツではないですね?」 片桐「ヘリクツではないです」 小林「ではなんでしょう?」 片桐「ええ!?」 小林「これが“真理”です。“物事の本質”です。“シュールリアリズム”です」 片桐「……」 小林「今、心の中で“三つ目は違う気がする”と思いましたね?」 片桐「思ってないです」 小林「……(じい」 片桐「…思いました」 小林「違いませんね?」 片桐「はい」 小林「シュールリアリズムですね?」 片桐「はい」 小林「シュールリアリズムではないですね?」 片桐「え?……ええと……はい」 小林「どうか自分を見失わないでください!」 片桐「はい!すいません!」 小林「わたしはあなたが心配なんです」 片桐「ありがとうございます」 小林「では、自分の意見が持てたら、またお越しください」  <小林、帰ろうとする> 片桐「……いやいやいや。(掴んで止める)    “お越しください”って言われましても。ここはあなたのウチじゃないですし」 小林「私の国にこんな言葉があります。    『“適切な指摘”とは“真剣白羽取り失敗”だ。どちらも“ズバリ”』    ……あなた、強くなりますよ。荒削りではあるが、光るものを感じます。    私の国にこんな言葉があります。    『“原石”とは“時刻表”だ。どちらも―――』」 片桐「“ダイヤ”ですか」 小林「……残念。『どちらも、重さがちょうど、こう、いい』ということです」 片桐「でも、ダイヤの方が……」 小林「……(じい」 片桐「あ、すいません。そっちのがあってます」 小林「……」 片桐「……新しいの考えてるんですね」 小林「私の国にこんな言葉があります。」 片桐「思いついたんですね」 小林「『“愛情”とは“G”だ。合わせて“ジー・アイ・ジョー”』」 片桐「ルールが変わっている!」 小林「(片桐を抱きしめる)……この温もりを忘れないでください」 片桐「いてて。痛い。痛い    (小林から離れて、小林の胸ポケットを探る)

   なんか、このへんに……あのお、これ」 小林「消えてなくなるMDウォークマンは、ひとつとは、限りません」 片桐「ええと……」 小林「今、心の中に、“警察”の二文字が、浮かびましたね?」 片桐「どうしてわかるんですか?」 小林「あなたの心の声、しっかりと届いてます」 片桐「(泣く)……この人…頭がおかしいよぉ……」 小林「最後に、お名前を教えていただけませんか」 片桐「だから、帰っちゃダメなんだってば」 小林「さあ!」 片桐「坂東です」 小林「安藤さん」 片桐「坂東です」 小林「安藤さん、安藤さん、安藤さん」 片桐「坂東なのに……」 小林「アン……ドゥー……トロワ!(おもむろに手品のようなアクション)」 片桐「……何ひとつ不思議なことが起こっていない!」 小林「……(じい」 片桐「(納得いってないように拍手)    ひとつ聞いていいですか?」 小林「わたしなんかに、お答えてきることなら」 片桐「……なにじん?」 小林「私は三十年前、日本人のお母さんと、そのときたまたま神戸に来ていた日本人のお父さんとの間に生まれました」 片桐「完全な日本人ですよね」 小林「さまざまな偏見に晒されてきました。みなは私にこう言いました。    “あいつはいったいなんなんだ”って」 片桐「私も今そう思ってます」 小林「がしかし、これだけは言わせてください。過去がどうあれ、私のハートは日本人です」 片桐「うん、だから日本人なんでしょう?」 小林「自分の話をするのは、いささか苦手です」 片桐「すいません。一応万引き捕まえたら、いろいろ聞くのがマニュアルになってまして」 小林「お勉強されたんですね。がしかし、『スタディー イズ ノット スタディー』」 片桐「……はい?」 小林「これは、私の家に古くから伝わる言葉です」 片桐「申し訳ないけど、ちっとも意味が分からない」 小林「さあ、風の吹く丘に目をこらしなさい。    舞い上がった砂の中に、あなたの本当の明日が待っています。    私の国にこんな言葉があります。    『“未来”とは“フューチャー”だ。英語で』    さあ!勇気を出して立ち上がってごらんなさい!」 片桐「立ってます」 小林「ボーイズ ビー 安藤さん」 片桐「坂東です」 小林「私の国にこんな言葉があります」 片桐「日本なんでしょ?」 小林「『近藤 イズ ノット 後藤』」 片桐「坂東です。あ、店長」 小林「ようこそ。今夜は楽しんで行ってください。    (握手を求めるが、腕をねじ上げられる)    いてててててててて」

特集記事
後でもう一度お試しください
記事が公開されると、ここに表示されます。
最新記事
アーカイブ
タグから検索
まだタグはありません。
ソーシャルメディア
  • Facebook Basic Square
  • Twitter Basic Square
  • Google+ Basic Square
bottom of page