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映画好きのふたり(ラーメンズ台本)

●登場人物 片桐♂:筋金入りの洋画マニア。ならずものになったり、中佐になったりする。 小林♂:筋金入りの洋画マニア。保安官になったり、ヤク中になったり、大統領になったりする。

●注意事項

「ラーメンズ」の同名のコントを書き起こし、声劇用に多少の改変を加えたモノです。

この台本に関しては性別転換等々、好きなようにお使いください。

だいたい上映時間は15分前後になると思われます。

●本編

片桐「なあ、耳かきある?」 小林「……うーん…(テレビに夢中で上の空)」 片桐「いや、うーんじゃなくてさ」 小林「……え?」 片桐「耳かきある?」 小林「……あぁ……あ、え?」 片桐「だから、耳かきはどこにあるんですか?」 小林「……あっ、おーおー、耳かきね」 片桐「そうだよ、どこ?」 小林「…………えっ?」 片桐「お前、髪の毛で首を絞めてやろうか」 小林「うん……え?いやいや」 片桐「何をさっきから一生懸命見てんだよ。……あ、これ正月番組の再放送じゃないか」 小林「年末年始、仕事だったから見られなかったんだよ」 片桐「もういいよ、自分で探すから」

小林「(テレビに対して)あ、すっげ、満点」 片桐「(机から何かを見つける)あっ!お前、何こんなもん集めてんの?」 小林「おい、やめろよ!」 片桐「これ、あれだろ?シュウマイに付いてる醤油入れだろ?」 小林「やめろよ!触るなよ!」 片桐「すげーな。百個くらいあんじゃん」 小林「いいだろ!可愛いんだよ!」 片桐「ふーん。……なあ、これなーんだ?」 小林「あっ。おい、返せよ!」 片桐「おっと、耳かき」 小林「……持ってない」 片桐「(キャラに入る)ほほう、そういうことなら、このヒョウタン醤油入れちゃんは……    どうなってもしらないぞ!」 小林「(キャラに入る)くそう、なんてこった……。    黒いペン立てにさしてある、白い筒の中さ!」 片桐「ふっふっふ……悪いな、ほらよ(持ってるものを放り投げる)」

片桐「貴様!だましたな!こいつは体温計じゃないか!」 小林「あんたもほとほと人がいいや」 片桐「……はーっはっはっは。人がいいのは……果たしてどっちかな!?」 小林「(先ほど受け取ったものを見返して)    こいつはピーナッツじゃないか!」 片桐「悪いなカウボーイ!俺もそこまで御人よしじゃあないんでね!    さあ、本物を返してほしけりゃあ、耳かきをよこしな!!」 小林「わ、分かった…」  <しぶしぶ耳かきを取り出し、歩み寄る小林> 片桐「おっと!そこから耳かきを投げろ。下からそーっとだ」  <投げられたものを受け取って> 片桐「ほほう、確かにこいつは上物だ。本つげか」 小林「さあ、ブツを渡したんだ。早く物質(ものじち)を返してくれ!」 片桐「おやあ?ブツを渡せば、こいつを返してやるなんて、誰が言ったかな!?」 小林「貴様、汚いぞ!」 片桐「ああそうさ、俺は汚いのさ。だから、今からこの耳かきで、きれいになるのさ!」 小林「待ってくれ!取引をしないか?」 片桐「……はっはっはっは。笑わせるな!今のお前は、そんなこと言える立場じゃないだろう」 小林「ぼくはもう一本、耳かきを持っている」 片桐「それがどうした?俺はこの高級本つげ耳かきを手に入れたんだ。    あとはこのヒョウタン醤油入れちゃんを、どういたぶってやるかだけだよ!」 小林「その、もう一本の耳かきに、綿毛が、ついていたとしてもか?」 片桐「なな、なんだってー!」 小林「しかも、桐箱入りさ!!」 片桐「うぬう!……欲しい!」 小林「さあ、同時に投げ渡しあう、ってのはどうだい?」 片桐「いいだろう。この耳かきとヒョウタン醤油入れちゃん、いっぺんに返してやる。    そのかわり、妙なマネはするなよ」 小林「分かってる。こっちは丸腰だ」 二人「せーのっ(投げ合う)」 小林「(受け取った醤油入れに)よく返ってきたね、大丈夫かい?けがはないかい?    (受け取った耳かきで耳掃除をして)あああー、耳かきキモチイイー!」 片桐「ほほーう。さすがは綿毛つき、入れ物も豪華絢爛!    (中身を見て)……貴様!だましたな!こいつは……ロケット鉛筆じゃないか!!」 小林「こいつが神様の下した答えさ!アディオス!    ヘイ!シルバー!(馬にまたがるようなポーズ)」 片桐「またしてもヤツにやられたー!!!」 小林「はっはっは!    あっ……(訪問者に対応する)    はい……はい……ああ、……すいません……はい、失礼します」

片桐「となり?」 小林「壁、薄いんだ」 片桐「ふうん。……あのさ、耳かき貸して」 小林「はい。(普通に渡す)    はあああ。引っ越したいなー。だだっぴろいマンションみたいなのに」 片桐「ああ、いいねえ」 小林「見た?『ブラックボードメイソン』で主演のニール・ペックが住んでた部屋」 片桐「ああ、ビルの最上階の」 小林「そうそうそう、で、ベットルームでヘレン・ポーラが寝てんの」 片桐「全裸で」 小林「うひひひひ。でさぁ、FBIから電話がかかってきてさ    『おい、カーチスのシンジケートが動き出した、今すぐ……』    よし、観よう、ビデオ持ってんだ俺」 片桐「おう、観よう観よう観よう。へー、なに?サミー・ベン好きなんだ?」 小林「うん!サミー作品は全部観た」 片桐「全部!?」 小林「……うん、全部」 片桐「全部?」 小林「そうだよ」 片桐「じゃああれは、『ハニーラングウェッジ』は?」 小林「観た」 片桐「『パイロットストーン』は?」 小林「観た」 片桐「『毛糸の人』は?」 小林「観た」 片桐「『クリスマス・ビレッジ』は?」 小林「……うん」 片桐「いや、うんじゃなくてさ。観たの?観てないの?」 小林「ううん、まあ、あの、あのお、うん、あのお……み○×△……(濁す)」 片桐「ん?観たの?観てないの?」 小林「うん、○×△……」 片桐「○×△?え?」 小林「観たよ!」 片桐「ほんとに?」 小林「ほんとだよ」 片桐「じゃ、内容言ってみてよ」 小林「まず、なんか人が来て、で、なんか人が出てくるやつでしょ」 片桐「……なんだ、観てんのか。それじゃあさあ、あれは?『ギミックマン』」 小林「あああ、あれな。もちろんだよ」 片桐「もちろん、観たの?観てないの?」 小林「ううん、まあ、あの、あのお、うん、あのお……み○×△……」 片桐「もっと、はっきり言ってくれない?」 小林「○×△」 片桐「○×△?観たのか、観てないのか、だから」 小林「……○×△てない」 片桐「観てない?」 小林「観た、観たよ!」 片桐「ほんとに?」 小林「ほんとだよ」 片桐「ほんとに?」 小林「ほんとだよ!」 片桐「内容言ってみ?」 小林「あのなんかあれだろ、こう、いろいろ動いてるやつだろ」 片桐「……なんだ観てんじゃん。あ、じゃあさ、あれは?    えー……『ゴールデンハンマー』」 小林「おう、観た」 片桐「ねえよ!そんな映画」 小林「(無視して)あったよ、『ブラックボードメイソン』」 片桐「なんだよ、『ゴールデンハンマー』って」 小林「観ようぜ」 片桐「柳生かよ」 小林「ツメ折っとかいないと…いてっ    かてーなこれ。なあ、爪切り、さっき貸したよな」 片桐「えっ?」 小林「貸して、早く、爪切りだよ」 片桐「えっ?」 小林「つ・め・き・り、だよ!早く貸して!」 片桐「(キャラに入って)はっ!?……お前……まさか!」 小林「(キャラに入って)お願いだよ……。最後の一回にするからさ……」 片桐「こいつ……まさか!爪切りに手を出したのか!」 小林「……切らせてくれよう……気持ちよくなりたいんだよう」 片桐「ダメだ!今ここで爪切っちまったら、    これまでの回復センターでやってきたことが台無しじゃないか!」 小林「頼むよう!最後の一回にするから……。    ああああああ!天井におびただしい数のナマケモノがぶらさがっている!    おい!爪が伸びてるぞ!!!おい!おい!!!」 片桐「しっかりしろ!」 小林「うっ、ううう……」

片桐「しっかりしてください!大統領!    ……おい!誰かウイスキーを持ってこい!    (ウイスキーを口に含んで吹きかける)」 小林「今まで、俺は何をしていたんだ……」 片桐「良かった、もう元の大統領なのですね?エイリアンは抜け去ったのですね?」 小林「心配をかけて悪かったな」 片桐「……大統領!」 小林「ところでひとつ、お前に頼みがあるんだが」 片桐「……え?」 小林「腹が減っているんだよおおおおお」  <小林の口から触手が出てきて片桐の顔をつかむ> 片桐「ぐあああああああああ!」 小林「おい!クライトン中佐!そいつはなんだ!」 片桐「たった今、あんたの口から出てきたバケモンだよ大統領!    ぐあああ!さあ、こいつを撃ってくれ!」 小林「し、しかし、このままでは君にもあたってしまう!」 片桐「何をのんきなことを言ってるんだ!    こいつを今殺さないと、国家の存亡に、いや、地球の未来にかかわってくるんだぞ!」 小林「くそっ!・・・アメリカ万歳!!!」  <片桐に向けて発砲する> 小林「(子供の肩を抱きながら)マイケル君、目を背けちゃあいけない。    君のお父さんは、立派な軍人だ」 片桐「う……うう」 小林「……なんてこった!    エイリアンが、今度はクライトン中佐に乗り移ったというのか!?」 片桐「知ってるかい大統領、一ドルコインには……防弾チョッキの効果も……あるんだぜ!!」 小林「ばっきゃろー!君こそ本当の英雄だ!    大統領命令を下す、明日から君は最高司令官だ!」 片桐「いや、悪いが大統領、俺は出世には興味がねえ。そんな肩書、いらねえよ」 小林「お前なら、そう言うと思ったよ。でもこのままでは、こちらの気がすまない。    そうだ、欲しいモノはないか?金か?車か?土地はどうだ?」 片桐「そうだな、そこまで言うなら一つだけ」 小林「おお、なんなりと」 片桐「……缶コーヒーを一杯、おごってくれよ」 小林「……こいつぅ!    君は本当に、バカでマヌケでうすらトンカチで……最高の友達だぜ!」 片桐「ほーら、マイケルおいで!(子供を抱え上げる)    わたくし、クライトン中佐、本日より長期休暇をいただきます!」  <二人は敬礼しあって、片桐去っていく> 小林「おい、かんじんなことを忘れていた!    最後にこれだけは言わせてくれ……Merry X'mas!    あっ……(訪問者に対応する)    はい……はい……ああ、……すいません……はい、失礼します」 片桐「いいじゃんなあ、ちょっとくらい」 小林「まあ、夜遅いから。……ちょっと、そのみかん取って」 片桐「(キャラに入って)なにい!お前まさか!」 小林「(無視して自分でみかんをとる)    観よ!『ブラックボードメイソン』」 片桐「観よう観よう、観なきゃね」 小林「(再生された画面を見て)あ?ああ!?あああー!」 片桐「お前、なに上から紅白録ってんだよー!」

<了>

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